同じような年輩の方を、ある人は師匠、ある人は兄さんと。
ここまでブログ読んで頂いて、
私が書いたものの中で、同じような年輩の方を、
ある人は師匠、ある人は兄さんと呼んでいて、
不思議に思われたのではないでしょうか?
師匠と兄さんと、
その区別はどこにあるのかしら?
と。
今日は、そのお話を、いたしましょう。

その差は・・・
芸の差? いえいえ。
その疑問を解くカギは、ズバリ、
私が文楽に入門した時にあるのです。
入門時、既にお弟子さんのいらっしゃった方は、師匠。
まだお持ちでなかった方は、兄さん、
とまあ、こう云う寸法です。
ですから、嶋さんでも、清治さんでも、
本来、私にとっては兄さん。
三人もお弟子さんのいらっしゃる紋寿師匠を、
兄さん、兄さんと呼ぶのも、そういう訳なのです。

兄さん、と言えば、今は段々
“○○兄さん”
という言葉も聞かれなくなってきました。
そこには、研修生の制度が関わっています。
私が、正式に文楽協会の技芸員になった昭和49年は、
玉輝さん、文字栄さんの研修一期生の入門と同じ。
それまでは、
5年入門が遅ければ、ほぼ年齢も五つ下、ということで、
兄弟子を兄さんと呼ぶ事に、何のためらいも無かったのです。
ところが研修が始まって、
入門者の出身地も日本全国に広がると共に、
年齢にも広がりが出たのです。
芸事は、
「すこしでも早い内に」
と、中学卒が大半だった所へ、
高校、大学を出た研修生が、大量に入門して来ました。
いくら「一日早ければ、兄さんだ」という文楽の世界でも、
七つも八つも年下の子供に、
「兄さん、兄さん」とは言いにくいものです。
私も、清五郎、和右君達が入門するまで、
年上の後輩ばかりでしたので、
ぞんざいな物言いも出来ず、どう付き合ったら良いのか、
困った覚えがあります。

そんな訳で、
「○○兄さん、○○にいちゃん」
の代わりに
今は
「××さん」
という呼び方が、主流になっています。
そうではないと分かっていても、「兄ちゃん」に較べると、
何となく人との交わりが、一味薄くなったような・・・

この頃、段々と、昔の事を思い返すようになってきました。
年を取ったと云う事なのかもしれません。
それはともかく、
文楽今昔物語、折に触れてまた少しずつ、
お話しさせて頂きます。

豊松清十郎

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[2010/08/19 19:54] | なまけず一所懸命 | トラックバック(0) | page top
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