楽日ご挨拶・5「ウーン、何だか惜しい」
初演時の役割は、
と申しますと、
猿曳に
四代目清十郎、
大名に
玉松、
太郎冠者に
紋壽、
そして猿を
簑太郎、今の三代目勘十郎
という顔ぶれ。

猿を遣う事になった
勘十郎兄さん。
前回の人形が
残ってはいたものの、
かしらも胴もボロボロで
とても舞台には
出せない代物。

「僕が作ります!」と言ったものの
正月までは
2か月足らず。
舞台の合間の
僅かな時間を
やり繰りしての
作業が続きます。

「ギオンコーナーの行き帰り
京阪の特急の中で
かしら彫ってたのを覚えてる。
車掌通ると
じろっと見るので
下に広げた新聞丸めて
サッと隠すねん」

そうそう、
あの頃の京阪特急は
大阪の京橋出ると
京都の七条まで
40分ほど
ノンストップ。
良く眠れました。

残ったかしらを
参考にはしたものの
全体のデザイン、仕掛けは
全て兄さんの
オリジナル。

ちょうどこの頃
人形の細工にも
興味が湧いた時期。

寝る間も惜しんで
作り上げた
その猿を見て、
名人大江巳之助さんが
ひと言。

「ようでけとる。
ほんまに良う出来とるが、
あんたは
人形遣い。
今はもっと他に
やらないかん事が
あるじゃろう」

このお言葉でそれからは
かしらや手足を作るのは
控える様にされたとか。

そのままかしら彫りに
専念していたら、
きっと今頃
人形細工人としても
名人と呼ばれて
いたのでは。
ウーン、
何だか惜しい
気もします。

豊松清十郎

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[2015/05/03 10:00] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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