人形遣いは、何を、一番大切に考えるでしょう。(自前のかしら・その2)
自前のかしらを持つ時に、人形遣いは、
何を、一番大切に考えるでしょう。
顔の感じ、ですか?
確かに、例えば同じ娘のかしらでも、
簑助師匠なら、ふっくらした、愛嬌のある物、
文雀師匠は、うりざね顔で、品のある顔立ち、
と、それぞれ僅かながら、違いがあります。
しかし、一番肝心なのは、遣い心地、
いわゆる、かしらの調子、と呼ぶ物なのです。

ここで大切なのは、
かしらを持つ胴串(どぐし)
と呼ぶ棒の、長さ、太さ、
そして、うなずきの糸を結び付ける、
チョイと呼ばれる竹の栓の、高低です。

写真の二つのかしらでは、
胴串の長さの差は、
然程でもありませんが、
簑助師匠のかしらでしたら、
これよりずっと、短くなります。
胴串の太さも、共用の物はもっともっと、
太い物もあります。

チョイの高さ
↑チョイの高さ。違いは1センチ程。でも、この差は大きい!

チョイの高さの違いは、お分かり戴けるでしょう。
高い方が文雀師匠、
低い方が共用の物です。
しかしこれも、
簑助師匠の物は、更に、更に低いのです。
今、文楽の人形遣いの中で、
一番高いのが、文雀師匠、
一番低いのが、簑助師匠でしょう。
そうそう、
玉男師匠のチョイは、更に高かったですが・・・
それは兎も角。

簑助師匠、文雀師匠、お二人とも、
亡くなった大名人、大江巳之助さんに、
自前のかしらを頼まれた時は、
何より、自分の手に、しっくりくる調子で、
と頼まれた筈。

皆さまにも、良くお分かりの、
お二人の師匠の、個性の違いには、
こんな秘密も、隠されているのです。
お仕着せの、万人向けのかしらでは、
自分が、本当に表現したい遣いを、
形に出来ない。
だからこそ、
自前のかしらは、
人形遣いの、憧れなのです。

並べてみると
↑こうして、並べてみると、どうですか?

因みに、
文雀師匠のかしらの、チョイの高さは、
文五郎師匠の高さ、そのままとか。
「ひとつも変えていない」
サブ(清三郎君)ちゃんに、そうおっしゃったそうです。
師匠の調子を、肌で感じ取り、大切に守りながら、
御自分の遣いを、作り上げて来られたのです。

そう言えば、
先代清十郎師匠が亡くなってから、
文昇兄さん、そして文雀師匠とお世話になる、
清三郎君のチョイが段々高くなり、
簑助師匠に就いた私のチョイが、
少しずつ低くなっているのも、
面白い所。
別に二人とも、師匠方から言われた、
という訳でもないのに。
こんな形でも、伝統は受け継がれていく、
という事なのでしょうね。

豊松清十郎

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[2010/06/24 16:01] | なまけず一所懸命 | トラックバック(0) | page top
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