ツケ打ちは、即、自分の役に立ちます。(ツケ打ちのお話・その1)
文楽教室も半ばを過ぎ、
いよいよ、
私の出番もやって参りました。
長い公演では、二月以来の女方。
それでも、やはりしっくり来るのは、
長年の、積み重ねでしょうか。
公演レポートは、また後程として。

さて、ずっと、お伝えしてきた、
口上三兄弟の三男、
ツケ打ちのお話を。

このツケ打ちは、口上、幕柝と違って、
即、自分の役に立ちます。
人形の型、決まりのタイミングなどが、
自然に身に付いてくるのです。
習い事は何でも、この「自然に身に付く」
という事が大切。
ですから私も、ツケ打ちは自分から、
「やらせて下さい」と、
玉男師匠に、お願いに行きました。

あの当時は、まだ文楽劇場が出来る前で、
道頓堀にあった、朝日座がホームグラウンド。
音がうるさいので、屋上に上がって、
手が腫れ上がるまで、打ちこんだ日々を、
思い出します。
道頓堀を通る人達は、「何の音?」と、
不思議に思った事でしょうね。

ツケ板とツケ柝
↑ツケ板とツケ柝です

歌舞伎ですと、ツケ打ちは、
道具方(大道具)のお仕事。
たっつけ袴姿も凛凛しい、ツケ打ちさんが、
下手花道の付け際に、颯爽と登場。
鮮やかなツケの音で、、舞台を盛り上げます。

聞く所によると、役者さんによって、
お好みの方があるとか。
しかし文楽では、二尺八寸の手摺の陰に、
這いつくばるようにして、打っています。
手を振り上げると、手摺から見えてしまう為、
動きはごく控えめに。
それでいて、しっかりと、
大きく、良い音を出さねばなりません。
一度、歌舞伎のように、カッコ良く打ってみたい物です。

ツケ打ち高さ規制
↑ここまでしか振り上げられません(モデルは玉佳さんです)

もう一つ違うのは、決まりの時の、ツケの打ち方。
歌舞伎では、
「バタン、バッタリ」と、二つに分ける所を、
文楽では、
「ガチャン、スコン、カーラ」
と、三つに打ち分けます。
たとえば、歌舞伎ですと、
人物が、右足を踏み出して「バタン」
大きく首を回し、決まった所で「バァッタリ」
となる所を、
文楽では、
踏み出して「ガチャン」
首を回して「スコン」
そして、おさまった所で「カーラ」
となる訳です。

歌舞伎は、板にしっかり打ちつけて、はっきりした音、
文楽は、少し浮かせて、響きのある音を出す為、
口真似の言い方(オノマトペ?)も、
違う所が、面白いですね。
それぞれに、感じが良く出ていると、思います。
この辺り、文章で説明するのは、限界が・・・
お話した事を頭に置いて、
実際の舞台で、
見比べ、聞き比べてみて下さいませ。

ツケ打ちで楽しいのは、
「菅原伝授手習鑑」の、車曳。
梅王、松王、桜丸の三兄弟が、吉田社頭で大喧嘩。
石投げ、六法、かんぬきに立ち見得と、
型のオンパレードとも言うべき、
華やかな舞台。
ツケ打ちはもう、休むヒマなく打ちっぱなし。
調子に乗ると、手が腫れ上がりますが、
正にスポーツ感覚。
終わると、皇居を一周したような(走った事はありませんが)、
爽やかさと満足感で、いっぱいです。

私も、昨年の博多座で、担当しました。
久々のツケ打ちでしたが、
血沸き肉躍る(?)、
という感じで、
ニコニコしながら、勤めました。

豊松清十郎

にほんブログ村 演劇ブログ 古典芸能へ 豊松清十郎にご声援を!

テーマ:文楽 - ジャンル:学問・文化・芸術

[2010/06/11 09:10] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
トラックバック
トラックバック URL
http://seijuro5th.blog113.fc2.com/tb.php/62-b4e5b01a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |