引き道具の陰にこの人たちあり・1「芝居心は必須です」
続いては
「絵本太功記」
尼ヶ崎の場から。

光秀を取り巻く
人々の嘆きが頂点に達した
圧巻の「大落とし」
が終わると、
辺りに鳴り響く
陣鐘の音、法螺の音
(まあ戦場も近いので
この芝居は全編
鳴り響いておりますが)。

急を察した光秀は
ダイナミックな「木登り」
のメリヤスに乗って、
躍動感溢れる
「團七走り」で
物見の松に
駆け上がります。

この人形ならではの
豪快な所作を
更に際立たせる為に
用いる演出が
「引き道具」。

一丁柝のキッカケで
尼ヶ崎の屋台が
下手から上手に移動すると、
見上げるばかりに
隆々とした
松の大木が
姿を表わします。

この演出、他には例えば
皆様良く御存じの
「新口村」で。

梅川忠兵衛を密かに落とし、
悲しみに沈む
孫右衛門が
家の外に出ると、
降りしきる雪の中
よろめく様に歩む
老父の覚束ない
足取りに合わせ
屋台は静かに動き
哀愁に満ちた
せつない幕切れに
しみじみとした
余韻を残してくれます。
同じ引き道具でも
引き方は対照的。
道具さんにも
芝居心は必須です。

また「野崎村」の段切れ、
久作親子が
お染久松を
見送る場面では
屋台が手前から奥に、
そして忠臣蔵の
「二つ玉」から「身売り」への
「道具返し」では
(幕を閉めない舞台転換)
それとは逆に舞台奥から
客席側に屋台が移動。
こちらも引き道具と
申します。

豊松清十郎

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[2013/06/21 21:10] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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