「妹背山婦女庭訓」トリビアその1・苧環編
やっと、
本格的に春到来!
となる筈が、また冬の寒さに逆戻り。
関東では、四月半ばのこの時期に、雪景色とか。
避寒も兼ねて、
大阪へ文楽見物など如何でしょう?

前回、夜の部の入りが寂しい(これを幕内では「入りが薄い」と言います)
と書きましたら、
早速、何人かのお客様から、
「わたし一人でもお役に立てるのやったら、もう一回見に行きます」
という、有り難いお声を頂戴したと、
管理人のtsubameさんからお聞きしました。
確かに、日を追う毎に客席の入りが、濃く(そうは言いませんが)
なってきたのでは?
文楽を、温かく見守り支えて下さるお客様に、
心からの感謝の気持ちと共に、
今回、芝六という大役を頂いた私。
「立役は持ち慣れない」だの
「腰が据わらない」だの
泣き事を言わずに、
お客様に
「もう一回見てみたい」
と感じて戴ける舞台を目指して、
千秋楽まで励みます。

今日は、また、文楽トリビア(今や死語?)ネタを、少々。

今回のように通しでご覧戴くと、
幾つか物語のカギとなる小道具が出てきます。
昼の部なら、
久我之助、雛鳥の、儚い運命を暗示する、桜の枝。
そして夜の部は、
求女、お三輪、橘姫を、
文字通りに結ぶ、紅白の苧環。
姫と求女の裾に結ばれて、クルクルと回る苧環。
まるで本物の糸が、そこにあるかのようでしょう。
お二人とも、涼しい顔で遣われていますが、
あれが、実はなかなか(私なら、とっても)難しいのです。

苧環は、糸を巻いた所の、
一か所にだけ錘を付けてあります。
軽く回せばその勢いで、ミシンの弾み車のように、
スルスルと回りだす仕掛け。
確かに、普段はとっても綺麗に回ってくれます。
ところが意地悪な事に、
舞台だとガクガク、ガタガタと引っ掛かり、
一度止まろう物なら、うんともすんとも、動いてくれません。
お芝居はどんどん進んでいくし、
人形遣いは、冷汗三斗。
焦りの極みです。

苧環その1
↑これが苧環です。

この思いは、名人でも同じらしく、
桐竹紋十郎師匠、
ある時、回らぬ苧環に業を煮やして、
その頃内弟子の紋寿兄さんに、
「おいっ、紋寿、何とかせいっ!」
とおっしゃったそうです。
元々器用で、物作りもお好きな兄さん、
師匠の為と工夫を重ね、
糸巻きの中に、モーターと電池を仕込んだ、
電動式苧環を作り上げ、師匠の元へ。
スイッチ一つで、クルクル回る苧環に、師匠もご満悦の態。
所がある日、何が悪かったのか、
舞台で回そうとしたその瞬間、電気がビリビリ。
その日から、その苧環は見向きもされず。
「折角の苦労も、水の泡や」
と、兄さん、笑顔で、話して下さいました。

苧環その2
↑くるくるくるお客様もっとくる、持っているのは玉勢君。

苧環その3
↑玉勢君、こうして見ると子太郎とよく似てますねぇ。

苧環、折角なので、
子太郎の玉勢君に、持って貰いました。
良く回っているでしょう?

豊松清十郎

(つづきます)

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[2010/04/19 08:13] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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