文楽猪物語・全三段「師匠方からお叱り」の段
さて、独参湯(どくじんとう)とも呼ばれる忠臣蔵、
人気狂言だけあって、この五段目も、
頻繁に上演されます。

使えば傷むのは、世の常の事。
私が入門する前から、舞台に立つ、
このイノシシ君。
ある時、あまりの傷みのひどさに、
新調しよう、と言う事になりました。

折角なら、もう少しそれらしくと、
小道具さんが工夫して、
出来あがったのが、この猪。

なかなかリアルです
なかなかリアルですね。

中には「見た事ある!」と仰る、
お客様もおありでしょう。
見比べると、確かにとってもリアル。
良く出来てはいるのですが、
舞台に出ると、何だかちょっと・・・
良く、目を剥くと言いますが、
そう、場の雰囲気にそぐわないのです。

見たことあります?
この顔、見たことあります?

見比べてください
見比べてください。

この舞台は、陰惨な場。
ここにあの、
ちょっとお間抜けな猪が、
顔を出す事で、惨たらしさが薄まって、
お客様の緊張感も、一瞬ふっとゆるむ。
そこへ、勘平が現れると、
舞台はまた、新たな緊張の中に。

「この猪では、写実に過ぎて、
その調子が取れんやないか」
と、師匠方からお叱りを受けたとは、
小道具の森永さんのお話。
これは、
我々の舞台も、同じ事。
折角良い振りを、思い付いても、
馴染むと言う事を忘れると、
変に浮いてしまうばかり。
芝居の雰囲気、匂いと言う物を、
大切にしなくては、と感じます。

そう言う訳で、
ふた芝居ほど使っただけで、
結局また、初代の猪に逆戻り。

二代目は、
倉庫の中で出番待ち。
尤も、森永さんによると、
その後大阪市の主催で、
「恋の陰陽師」
という新作を上演した時、
こちらの猪が使われた、との事。
私も、出演した筈ですが・・・
ほとんど覚えが、ない・・・

舞台袖で仲良く
この日は、舞台袖で仲良く。

良く見ると、
なかなかラブリーな、このイノ君。
彼が主人公の新作で、
夏休みの親子劇場で大活躍、
なんて言う風には、参りませんかねぇ。

豊松清十郎

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[2011/06/15 20:30] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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