梅川忠兵衛、衣裳新調の巻・2
文楽人形には、骨も肉もありません。
手足は、胴と呼ばれる土台から、
紐一本で、ぶら下がっているだけ。
骨も肉も、人形遣いの遣い一つで、
作り上げて行くのです。
そこで大切なのが、衣裳に入った薄綿と、
生地そのものの、腰。

これだけです!
これだけ、これだけです!(まったくの裸です)

新品は、綿も生地も固い、固いのです。
人形の手に添わないと、
思った体の線が、出てくれません。
人間でしたら、たとえば織物の様に、
固い生地でも、
中にある体の動きは、伝わりますが、
人形は、そうは行きません。

どこから見てもこれだけ
どこから見てもこれだけです

特に困るのが、女形。
女性らしく、肘を殺して、
しなやかな線を出したいのに、
あそこが突っ張る、
ここが飛び出る。

アップで見てもいっしょ
アップで見てもいっしょです

袖付けの、肩山の所は、
生地が重なり、折目もあって、
特に言う事を、聞いてくれません。


梅川の後姿です
梅川の後姿です

勿論、仕立てる衣裳部でも、
使う生地の素材から、
綿の入れ加減まで、
様々に、細かく気を配って、
何とか新調でも、遣い易い様にと、
工夫を凝らしてはいるのですが、
それにも限界が。


袖付け部分です
袖付け部分です。(わかりますか? ここが盛り上がるのですが)

梅川を遣われる、
紋壽兄さんも、
お稽古の時、
「ひゃー、こりゃあかんわ」
と仰って、それからは毎日、
楽屋に戻ると、衣裳を揉んだり、
叩いたり。

公演も半ばを過ぎて、ようやくこの頃、
少し思う様に、なって来た御様子。
この先、数多い舞台で使われて、
ようやく具合が、良くなってきた頃には、
生地が弱り、染めも色褪せて、
また新調の時期に。


梅川忠兵衛の紋です
梅川忠兵衛の紋です。(実はこの紋も、今回新しくなりました)

見栄えと使い勝手が、上手く重なる時は、
ほんの僅か。
花の命は短くて、という所でしょうか。

それにしても、誂えたばかりの、
衣裳を目の前にして、
「ああ、またサラか。
かなわんなぁ」
と溜息をついているのは、
芸界広し、と言えども、
文楽くらいの物でしょうね。

豊松清十郎

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[2011/05/18 20:10] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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