御恩に感謝して、歩き続けます。(4月公演御礼・その7)
揃いのお守りを見て、姉妹だったと確かめ、
二人が寄り添う所では、膝立てしたまま、
なかなか倒れてくれません。

良く考えたら、
「ハイ入り込みました、倒れました」
という段取りだけで、おのぶの顔を、
きちんと見ていませんでした。
「懐かしい、可愛い」と妹を思う気持ちで、
グッと顔を向けたら、ピッタリの間で、
動いて下さいました。

「続くは末の松山を、袖に波越す涙なり」の文句で、
二人が上下になって、見交わす所。
大夫の聞かせ所で、節がたっぷりですが、
私は、早く顔を振り上げたい。
重いかしらで、下向きでいるのは辛いのです。
しかし師匠は、ここと言う所までは、
目線を外して下さいません。
「ここまで、ここまでや」
と言っているかの様に。

力み過ぎて、人形の腰が浮いたと思えば低く、
疲れてきて、構えが下がって来ると高く、
おのぶの人形の構えで、
教えて下さいます。
上がらない人形も、上げない訳にはいきません。

きっと皆様、いつも通りに変わらぬ、
簑助師匠の遣いだと、思われたでしょう。
しかし実際は、あれだけの人形を遣いながら、
私に舞台のイロハを、
たたき込んで下さっていたのです。
まるで、住師匠が文字久君に、
対面で稽古をつける時の様に。

舞台がはねてから、
「あそこはこう、ここはこう」
と言うのではなく、
実践の生の舞台で、
一番身に沁みる形で。

相手が、きちんと遣える宮城野だったら、
もっともっと、
素晴らしいおのぶだったろうに、と思うと、
お客様にも、師匠にも申し訳なく感じますが、
考えてみれば、簑助の人形、芸は、
その程度でどうこうなる様な、
生易しい物ではありません。
一緒の舞台に立たせて戴いて、
師匠の凄さを、更に強く感じました。

何とか形にしてやりたい、
何か一つでも掴めないか、
という師匠の温かなお心に、
結果として、応える事は出来ませんでしたが、
私にとっては、
十年、二十年分の、
中身の濃い、三週間でした。
私は本当に幸せ者です。
お師匠はん、有難うございました。
皆様、有難うございました。
御恩に感謝して、歩き続けます。

豊松清十郎

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[2011/05/04 21:00] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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