葵御前を、遣わせて戴きます。(四月公演の役への思い・其の1)
葵御前を使うのは、これが四度目。
好きな役という事もあり、
その時々で、工夫を積み重ねて、
演じて来た積りです。
しかし今回は、
襲名の晴れの舞台。
その一員に加えて戴いた、
喜びと誇りを胸に込め、
新たな気持ちで、勤めたいと思います。

この役、
舞台の真中に立つ事は、
決してありません。
程良く、品良く、邪魔をせず、
しかし御台所としての、貫禄、
存在感は、失わない様に。
そこへもう一つ。
身重の体、という事も、
忘れてはいけません。

初めてこの役を戴いた時、
文雀師匠から、
「御台さんは臨月やで」
と、お叱りを受けた覚えがあります。
品良く、背筋を伸ばして、
という事ばかりに捉われて、
肝心かなめ、
一番大切にせねばならぬ、
役の心を、忘れていたのです。

とは言っても、
前屈みでフーフー、
という訳にも行きません。
何か事が起こった時、驚いた手が、
何気なしに、お腹を庇っている、
そんな、ごく自然な動きで表現できたら、
そう思っています。

役の心が、
自分のお腹に有れば、
当たり前の事なのでしょうが、
遣う事に精一杯の我々では、
それがなかなか難しい。
一つの役を、見比べた時に感じる、
師匠方と私の、印象の違いは、
きっとこんな小さな所から、
始まるのでしょう。

自分の性格にも、合っているのか、
葵御前の様な、動きの少ない役は、
昔から好みです。

こういう役は、リアクションが命。
舞台で繰り広げられる事柄に、
いかに程良く反応するか。
自分の思いだけで、達者に動けば、
時には喝采を戴く時も、
有るかも知れませんが、
お芝居のストーリー、中身を
大切にされるお客様には、
肝心の筋立てが、ぼやけてしまいます。

かと言って、自分の直接絡む所以外は、
何も動かない、というのでは、
これまたお芝居が、盛り上がりません。

豊松清十郎

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[2011/04/01 17:59] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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