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皆様御存じの通り、東日本の広い範囲が、
「東北地方太平洋沖地震」に襲われました。 大都市仙台は、勿論の事、 八戸、宮古、大船渡、気仙沼、石巻、いわき市他、 巡業で度々訪れた町が、甚大な被害を被っています。 大震災に加えて、あの津波の恐ろしさ。 殊に宮古は、襲名した年の巡業で、訪れたばかり。 チリ地震の教訓から、津波に万全の対策を取った、 あの美しい街並みが、為す術も無く、 一瞬にして、瓦礫の山と化したか、と思うと・・・ 言葉もありません。 月並みですが、亡くなられた方々の、 御冥福をお祈りすると共に、 被災者の皆さんの、一日も早い復興を、 願うばかりです。 今年のヴィアーレ座公演は、 お天気にも恵まれ、客席は大変な賑わい。 無料公演ですと、チケットを手にしても、 当日の御都合で、お越し頂けない、 という事も、多いのですが、 今回は、まだまだ寒い中にも、拘わらず、 大勢のお客様が、詰めかけて下さいました。 心から、御礼申し上げます。 ありがとうございました。 御応募戴きながら、抽選に漏れた方も、 多数いらっしゃった、とお聞きしています。 これに懲りず、 是非来年も、 お申込み、下さいます様に。 今回、客席を見回すと、 子供さん達の姿が、目に付きました。 一回目と二回目の入れ替え、 食事に出る私の横を、 おそらく三十代でしょう、 若いお父様が、 男の子と女の子、幼稚園位の、 二人のお子さんの、手を引いて、 帰って行かれます。 お父さんが、 「今日、面白かった人、手をあげてぇー」 子供たちは、 「シーン」 お父さんはまた、 「面白かった人」 子供たち、同じく、 「シーン」 「おもろなかった?」 とお父さん。 そこで一人の子が、 うつむきながらポツリと、 「こわかった…」 笑いました。 そうですよねぇ。 綺麗だったお姫様に、 突然鬼の形相で、睨まれたら、 怖いに決まってます。 でも、感じました。 このお子さんたちは、しっかり舞台を、 見ていてくれたんだなぁ、と。 だからこそ、 お父さんに聞かれて、 「おもんなかった」 ではなく、 「怖かった」 の一言が、 口を突いて出たのだ、と。 微笑ましい気持ちと共に、 とっても、嬉しくなりました。 もう一つ、嬉しかったのは、 お父さんが、お子さんを連れて出るのに、 文楽を、選んで下さった事。 幼い二人の心に、「怖かった」という、 今日の思い出は、一生刻み込まれた事でしょう。 子供たちにとって、暫くは、 文楽=こわい、 という事に、 なるのかも知れませんが、 それで、全く構いません。 「文楽? 知ってますよ。 日本三大古典芸能の、人形劇でしょう」 と、頭の知識で、答えが返って来るよりも、 「文楽? 何か知らんけど、子供の頃に見て、 とにかく、怖かったんだけ、覚えてるわ」 という方が、何十倍も、 その子の、 将来の為になる気がします。 勿論、我々文楽の為にも。 お父様、良く文楽を選んで下さいました。 御礼申し上げます。 確かに、その後の舞台でも、 客席から泣き声が、聞こえました。 親御さんは、気が気で無かったでしょうが、 私個人としては、気兼ね無く、どんどんと、 お連れ戴いたら、と、思います。 本公演は、大人の楽しみ。 浄瑠璃が聞こえなくては、 お芝居が台無しです。 しかし、文楽に気軽に親しんで戴こう、 と企画された、今回のヴィアーレ座の様な時は、 お子様が小さくて、普段御覧戴けない方にも、 文楽を、楽しんで戴きたい。 周りの、いつも御贔屓のお客様には、 少々御迷惑な事か、とは存じますが、 「将来の文楽ファン、増やしたってんねん」 というお気持ちで、御寛容願えたら、 私の喜び、これに上越す事は御座いません。 全国の、被災者の皆様の、 御苦労、御心労を偲びつつ、 今日からまた、私は、 ギオンコーナーで、精一杯、 勤めさせて戴きます。 豊松清十郎 |
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