八重を遣う以前の私的技術試論・その1
公演も序盤を過ぎ、
床と人形の息、
左、足との呼吸も整い始め、
舞台にも、ようやく落ち着きを、
感じられる様になってきました。

例年、雪のちらつくことも珍しくない、
二月の東京公演。
寒い寒いと、お伝えしてきましたのに、
初日の声を聞く辺りから、
三月も下旬並みの、暖かな陽気。

前回お伝えした、前庭の梅も、
更にその香りを、増しています。
楽屋入りの前に、ちょっとのぞいて、
笑顔で、庭を散策されている、
お客様の姿を見掛けると、
「もしかして、ブログ読んで下さったのかな」
と、ひとり勝手に喜んでおります。

さて、今回私の遣っておりますのが、
八重。
大袈裟に、かしらを傾げたりする事なく、
自然な動きの中で、そこはかとなく、
八重自身の持っている、可愛らしさを出したい、
などと、抱負を述べましたが、
これはあくまで、希望、目標。
実際は、とてもとても。
と言うより、全く全く。(こんな言葉は無い!)

三人の嫁女達
↑三人の嫁女達。ガールズトーク中でしょうか。

大体私は、
役の心、感情の起伏などを、
舞台で表現するのが、苦手です。
これは勿論、
いただいた役への、
理解や、掘り下げ方が足りない、
という事も、あるのでしょう。

しかし、自分として一番大きいのは、
「この遣いでは、恥ずかしくて」
という気持ちです。

春は梅
↑春は梅。今回は三人共、新調の衣装です。

人形遣いが、
役に感情移入しないでは、
お客様が、感動できる筈が無い、
という事は、当然弁えているのですが、
怒る、嘆く、泣く、苦しむ
などという場面で、
その時の、役の心になるよりも、
自分の技術の無さに、気が付いて、
それこそ、その事で、自分の方が、
怒り、嘆き、泣き、苦しんでしまうのです。
(なんのこっちゃ、という感じですね)

千代は松
↑千代は松。生地の染めが遅れ、衣装部さんは深夜迄残業で、間に合わせてくれました。

これは、一つはこれまでに、
たくさんの名人を、見て来たから、
という部分が、大きいと思います。

人それぞれに、
個性、遣いっ振りは違っても、
文楽人形の動き、
という線は崩れない。
自分ばかり、その気になって、
人形はお留守、
という事は、
どの師匠方にも、全くありませんでした。

八重は桜
↑八重は桜。良い頃合いの、緑色に染め上がりました。

自分の気持ちを、
今遣う役の感情を、
思いのままに表現する為の、
器、乗り物、そういう物が、
十分に出来上がっているのです。

表現の方法も、多種多様。
一手販売ではありません。
引き出しの数が、多いのです。

今遣っている、自分の人形が、
泣いていないのが、分かっているのに、
泣いた気持ちには、
どうしても、なりきれない。
これが、正直な所です。

いや、
形も出来ないのに、
その気になってどうする、
と、
戒めている所さえ、あります。

豊松清十郎

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[2011/02/10 10:23] | あせらず清十郎 | トラックバック(0) | page top
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