清五郎君、ありがとう!(文楽夏休み公演御礼・その3)
二部の半通しは、
お客様から、
「何回も見ている十段目ですが、
各人物のセリフの、意味や心情が、
初めて良く分かり、伝わってきました。
光秀の額の傷も」
と、お言葉をいただきました。
特に筋立てが複雑な、時代物では、
通し上演の大切さを、感じました。

私は太十で久吉を。
坊主姿で二回、そして陣立ての姿で、
段切れに登場。

長い十段目の、一番良い所で颯爽と。
僅か十分程ながら、印象に残る、
いわゆる「おいしい」役なのですが、
私にはこの十分間が、重い、重い。
「おいしい」どころではありません。
しかし役柄からして、出遣いした顔が、
あんまり必死の形相では、ちょっと。
何とか涼しい顔を、装いましたが、
どうにか持っていられたのは、
左を遣ってくれた、
清五郎君のお陰。

立役の場合、左遣いは、
空いている左手を、人形の腰輪に当て、
主遣いの、胴串を持つ腕を支えます。
本来は、急所急所の決まりなどで、
助けるのですが、
今回私は、兄弟弟子のよしみ(?)で、
ずっと重さを、預けっぱなし。
時々「ううっ」と言う、
うめきも聞こえましたから、
頭巾の中は汗みどろ、
顔は苦痛に歪んでいた事と思います。

本当の所、久吉の三分の二位は、
清五郎君が持っていた様な物かも。
慣れて来るに連れ、
少しは軽くなった物の、
楽日までお世話になりました。

私ほど極端では無くとも、
人形は手伝い次第。
左遣い、足遣いによって、
人形が生きも、死にもするのです。
涼しい顔をして、喝采を一人占めする主遣いの横に、
黒衣、頭巾で身を隠し、
陰で支える左遣い。
清五郎君、ありがとう!
また、頼んます。

今年も暑い中、たくさんの御来場、
ありがとうございました。
特に、文楽デビューのお子様に見て戴く、
一部の入りが良かったのを、
とっても嬉しく感じました。

私はこの後、暫くお休み。
内子座の間に、祇園コーナーへ。
27日は、郡上大和。
そして東京へ参ります。
このお休み、熱中症にならぬ程度に、
楽しみたいと思います。
どうぞ皆様も、お元気で。

豊松清十郎

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[2011/08/13 13:10] | あせらず清十郎 | トラックバック(0) | page top
小さな努力の積み重ねで、出来あがった舞台です。(文楽夏休み公演御礼・その2)
一部のもう一本、
「舌切雀」は大好評。
前回よりも、
化け物に工夫を加えたり、
宙乗りの雀さんの数を増やして、
最後を更に盛り上げたのも、
良かったのでしょうか。

お客様から自然に生まれた、
文楽には珍しい手拍子が、
楽日まで、途切れる事はありませんでした。

数少ない、お子様向けのお芝居として、
この先も繰り返し上演され、
夏休み公演、定番の一本となりそうです。

ここで、御質問。
「初日拝見しました。
舌切雀には、演出家がおられますか?
通常文楽には演出家がいない、という事の様ですが、
今日の舞台には、効果的な演出がたくさんあり、
どう見てもいる様な、印象を受けましたが」
こりんごさん、有難うございます。

確かに普段のお芝居の時には、
演出家がおりませんが、
今回の様な新作物の時は、
当然必要となります。
過去に「春琴抄」では、能楽の観世栄夫さん、
「狐と笛吹き」では、宝塚の植田紳爾さんなど、
外部の著名な演出家を、お願いした事もあります。

文楽劇場制作の、
渕田さんにお聞きすると、
「今回は再演という事もあり、
特に演出家は立てませんでした。
つづらの化け物の辺りや、フィナーレなど、
私もアイデアは出しましたが、
形にするのは、勘十郎さん始め、
人形遣いの方々。
そこに、小道具方の頑張りや、
音響、照明など各スタッフの、
小さな努力の積み重ねで、
出来あがった舞台です」
との事でした。

お芝居の流れを決め、
関係者を従わせて行く、
絶対的な演出家ではなく、
演者、スタッフの工夫をすり合わせて、
一つの芝居にまとめて行く、
そんな役割を担っている、
渕田さん。
気遣いは人一倍でしょうが、
今回の子供達の、熱い反応には、
大いに報われた事と思います。

豊松清十郎

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[2011/08/12 10:10] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
やはり清姫は、激しさが無いと。(文楽夏休み公演御礼・その1)
お陰さまで、
文楽夏休み特別公演も、
無事に千秋楽を、迎える事が出来ました。

今回第一部で遣った、
「日高川」の清姫は、
昨年の、正月公演で戴いた役。
さらに磨きを掛けて、と臨んだのですが、
あるお客様から、
「泳いでいる時、大変そうですね?
人形だけでなく、清十郎さんも水に揉まれて、
あえいでいる様に見えましたよ」
のお言葉が。

いやぁ、去年はあそこで、
不敵な笑みを漏らして、
ガンガン泳いでいた筈なんだけど・・・

更に別の方からは、
「走り込んで出て来た時に、
もう、とってもしんどそうでしたね、
清十郎さんが」
出の所からって・・・

やはり少々、夏バテ気味だったようです。
丁寧には遣った積りですが、
やはり清姫は、激しさが無いと。

清姫の悲しみ、怒り、無念さを、
昨年よりも、もっともっと激しい遣いで、
という公演前の願いが叶わず、
迫力不足に終わった様で、
無念残念。
体調管理も芸の内。
次回も是非清姫を、
と楽日の今から、
リベンジを誓っております。

さてこの清姫には、
ガブという
特殊なかしらを、用います。

美しい娘がしらの目が返り、口が裂け、
一瞬にして鬼の形相に変わるという、
お馴染みの変化がしらですが、
このガブには、角の出る物と出ない物の、
二種類が御座います。

角なしです1 角なしです2
角なしです

角ありです1 角ありです2
角ありです

角の出る物は、元々鬼が化けている、
「戻り橋」の若菜や、西遊記の銀角などに。
出ないかしらは、嫉妬や怒りなど、
心の葛藤が激しく現れてはいても、
実際には姿の変わらぬ、
「嫗山姥」の八重桐、「薫樹累物語」のかさね、
などに用います。

並ぶと違いますね
並ぶと違いますね

実は角出しは二番
実は角出しは二番

やっぱり違いますか
やっぱり違いますか(左が清姫)

返った目の色も、金と赤、
角なしには口元に牙も無く、
印象がずいぶん違います。

安珍への思いが募り、
人の姿を離れてしまった、
悲しい清姫には、角出しを使いました。

今このガブがしらは、たった三番のみ。
精巧な仕掛けですし、破損の無い様、
大切に遣っています。

今回の清姫では、
うろこの衣装の方にしか、
登場しませんでした。
しかし波幕の中で泳ぐ、僅かな時間では、
お客様にも分かりにくく、
「今回ガブは出ないんですか」
というお声も。

日高川を泳ぎ切った幕切れ、
満開の桜の中、
「妖しかりける」の決まりには、
やっぱりガブを引きたい。
次回は是非ともお願いして、
贅沢に二番共、
ガブで遣わせて戴く事に致しましょう。

豊松清十郎

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[2011/08/11 13:12] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
これはあくまでも「仮」の春巡業の日程のお知らせです。
もう皆様にはお馴染みの、
巡業仮予定。
今回は来年
2、3月に行われる、
春巡業の日程のお知らせです。

例によって、これはあくまでも「仮」。
まだまだ、変更される場合も御座いますので、
ご注意ください。
大阪錦秋公演の始まる、11月頃には、
正式に確定する事と思います。

【2012年春の地方公演・仮予定】

2月25日(土) 国立劇場おきなわ 098-871-3311
2月26日(日) 国立劇場おきなわ
2月29日(水) かごしま県民交流センター 099-221-6600
3月 1日(木) 戸畑市民会館 093-871-7200
3月 2日(金) iichiko総合文化センター(大分市) 097-533-4000
3月 3日(土) アステールプラザ(広島市) 082-244-8000
3月 4日(日) 京都府立文化芸術会館 075-222-1046
3月 6日(火) 倉敷芸文館 086-434-0400
3月 8日(木) 大田区民プラザ 03-5744-1600
3月10日(土) アルカイックホール・オクト(尼崎市) 06-6487-0800
3月11日(日) 姫路キャスパホール 079-284-5806
3月15日(木) 堺市民会館 072-238-1481
3月17日(土) 三重県文化会館(津市) 059-233-1122

以上12会場13公演

東日本の公演が少なく残念ですが、
久し振りに、
沖縄県での上演が。
決定までに、更に公演地が増える事を、
願っております。

お近くの皆様、どうぞお楽しみに。

豊松清十郎

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[2011/08/07 08:42] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
新人さんいらっしゃい(吉田愼之輔?・その2)
研修生という選択肢もありましたが、
始めから、やるなら人形遣いで、
という気持ちに迷いは無かったので、
簑助師匠に御相談すると、
まさかまさかの、
直弟子に迎えて下さる、
とのお話し。
初めて文楽を見てから、ほんの一年余り。
本人も驚く程のスピードで、
とんとん拍子に話がまとまり、
晴れてこの4月から、研究生となりました。

今は誰よりも早く楽屋入り、部屋の掃除から、
舞台では小幕の開け閉め、小道具の介錯など、
朝から晩まで文楽漬けの毎日。

入ってみて、
「文楽の印象は」と問うと、
ニッコリ笑顔で、
「楽しいです!」
との答え。

伝統芸能という言葉のひびきから、
ただひたすらに厳しく、
堅苦しい世界と、覚悟していた様ですが、
入ってみれば、玉彦、勘介、玉路君や、
同じ研究生の田中君など、
若い仲間に囲まれ、
ともに修行に励む日々。
楽しくなければ続きません。
慣れない事ばかりで、
緊張で強張っていた春先から、
今ではしっかり、自分のポジションを確保。
若い兄さん達と、冗談を言い合って、
自然な笑顔も、生まれるようになりました。

なにやら相談中
みんなで、なにやら相談中

こんなん出来ました!
こんなん出来ました! みんないい仲間です

これから長い道のりを、
苦も楽も共にして、
語りあい、競い合い、
一生付き合っていく仲間たち。
二十年後、三十年後、
この若者達が、どのように育ち、
文楽を支える、太い柱となってくれますか。
皆様の温かく、末永い御支援を、
よろしくお願い申し上げます。

因みに、今時には古風な、
愼之輔という名前。
「やっぱりあのしんちゃん?」
と気になって、聞いてみましたら、
「いやぁ、全く関係ないんですけど、
皆さんに聞かれるんですよね」
とお父様、苦笑いされておりました。

一年間の、見習い期間を終えると、
来年四月には名前をいただき、
技芸員として皆様の前に、
お目見えする事となります。
やっぱり名前は、
吉田愼之輔?
でしょうか。

豊松清十郎

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[2011/08/02 18:18] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
新人さんいらっしゃい(吉田愼之輔?・その1)
続いて二人目の新人さんは、
木下愼之輔君。
こちらは、今年高校を卒業したばかり、
只今18歳のフレッシュマン。
簑助師匠に入門を許され、
この四月から研究生として、
頑張っています。

愼之輔君のふる里は、
信州飯田市。
長野県南部、伊那谷を流れる天竜川の、
河岸段丘に開けた、
県下第4の街。
リンゴ並木や、天竜下りなどで有名ですが、
実は、人形劇の町でもあるのです。

江戸の昔から続く人形座が、今でも残り、
毎年8月に開催される、
国内最大の人形劇イベント、
いいだ人形劇フェスタには、
全国の人形劇団が参加し、
市内各所の文化会館、公民館、
小、中学校、保育園から、
神社や広場までが会場となって、
飯田の街が、人形劇一色となります。

そんな街で育った、愼之輔君、
お祖父様もお父さんも、
地元今田人形の、人形遣い。

本来なら、飯田のサラブレッド、
という所ですが
本人はさほど興味はなし。
御家族も、無理強いする事も無く、
中学のクラブで、少し経験はした物の、
人形よりは野球、バレーボールなど、
スポーツに打ち込む日々でした。

只今楽屋を掃除中
只今楽屋を掃除中

そんな彼が、
お父さんに連れられて、
大阪の文楽劇場にやって来たのが、
高校二年の冬。
それが転機の始まりでした。
その時上演されていたのが、
「伽羅先代萩」。

骸骨の右手を担当しております
舞台では分離する骸骨の、右手を担当しております

実は中学の人形クラブでは、
政岡を遣っていた(すごい!)そうで、
自分とのあまりの違いに(当然ですが)、
見入っている内に、
いつしかグイグイと、文楽人形に
惹き込まれて行きます。
それからは自分でも、
片道4時間のバスに乗って、
国立劇場に通う様に。

今田人形と文楽とはご縁があり、
その関係で舞台袖で見せて貰うと、
益々文楽の虜に。
この世界で生きて行きたい、という思いが、
更に強くなっていきます。

豊松清十郎

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[2011/08/01 10:10] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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