五月公演御礼・其の三
英兄さんは、
今からが大夫の旬の時。
大阪で一段、代役を勤められた時は、
気合いも入って、大熱演、
素晴らしい舞台でした。

しかし、今回の源大夫師は、
大きさが違いました。
浄瑠璃の間、骨組みが違うのです。
語りを載せる、器の違いと言うか、
切場を語るという事は、
こういう物なのだと、
初めて感じました。

遣っていると、
仕種がこせつかず、
自然とゆったり、大きく動いて、
恰も自分が、上手くなったように、
感じられるのです。
これは、その前「瀬尾十郎詮議」で、
住師匠の語りにも、感じました。

本来、
師匠が語る様な場ではなく、
仁惣太が帰った後、
葵御前が、舞台に登場する時、
語りの間の大きさに、
こちらの足取りが合わず、
戸惑いました。
いつもの大夫なら、
もっとサラサラ語るのに。
しかしこれは、自分の足取りが、
小さいから。

中日を過ぎると、これが心地良く、
感じられる様になりました。
曳き上げられた、手首を前に、
三人顔を見合す所も、
始めは間が持たず、辛く感じられたのが、
やがて、こちらの腹が出来てくると、
芝居のコクが感じられて、
難しいが、
何とも楽しい物に。

大きく語る、これは死に物狂いの、
長い長い修業を経た中で、
やっと、身に付く物なのでしょう。
切場と言う物の重さ、
浄瑠璃の大切さを、
改めて、身に沁みて感じた、
五月でした。

英兄さんも、今回の代役で、
大きな物を、掴まれた事と思います。
やがて、師匠方の様な、
立派な切場語りに。
私も、その浄瑠璃に負けない、
大きな遣いを目指して、
また励みます。

豊松清十郎

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[2011/05/29 18:25] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
五月公演御礼・其の二
今月も、二役持たせて戴きました。
昼の部に、続けて二役。
「大変でしょう?」
と言って下さるお客様も、
いらっしゃいましたが、
特に疲れは、感じませんでした。
自分なりに、充実した毎日を、
送らせて戴いた、お陰でしょうか。
有難い事です。

葵御前は、四月に続いて。
先月、強く思った様に、
毎日を、
新たな気持ちで勤める様に、
心がけて臨みました。

与えられた役割、お芝居の流れを、
しっかりと飲み込んだ上で、
葵御前の性格、
その時々の思いを、
かしらや体の向き、傾ける角度、
仕種の緩急、強弱、などに、
変化を付けながら、形にして行く。
その為には、まず構えを正しく、
胴串をきっちり、強く握らないと。

とは言いながら、何が正しくて、
何が間違っているのか、
本当の所は、未だに分かっていません。

でも、やらなかったら分からない。
続けていれば、探していれば、
諦めなければ、いつか分かるかも。
そんな、毎日でしたが、
出来た事も、出来ない事も、
楽しく、楽しく取り組めたことが、
幸せでした。

公演中、ある方に、
「ちょっとずつ、存在感が出て来たわね」
と言って頂いたのが、
大きな励みになりました。
いつもなら、周りが見えた頃には、
楽日を迎える、本公演。
四月、五月と、
ふた月持たせて戴いて、
やっと少し、遣った気になれました。
毎回こんな風だったら、
と、密かに願った五月でした。

さて、そんな風に日々楽しく勤めた、
葵御前でしたが、
ある日自分の人形が、
御台様らしく、大間にゆったりと、
遣えている様に感じました。

フムフム、俺も少しは、
遣える様になったか、
と鼻息を荒くしかけましたが、
残念ながら、
不正解。
私ではなく、源大夫師匠の、
語りのお陰でした。

今月源大夫師は、
実盛物語を語って、
舞台に復帰されました。
体調は、まだまだ万全とはいかず、
前半のみの語り。
師匠にすれば、不本意な所も、
おありでしたでしょう。

豊松清十郎

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[2011/05/29 10:21] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
五月公演御礼・其の一
新緑の、
東京公演を打ち上げて、
大阪に帰って参りました。

四月五月の、ふた月に渡る、
襲名披露の公演を勤め上げ、
源大夫、藤蔵のお二人は、
感慨一入の事と、思います。
私も、三年前を思い出し、
我が事の様に、嬉しく感じました。
口上を、買って出られた住師匠、
陰で支えた、奥様方を始め、
関係の方々も、本当にお疲れ様でした。

さて、このブログを昨年始めてから、
吉例となっておりました、
大入り袋の御披露、
残念ながら、
今月は叶いませんでした。

お目出度い公演に、華を添える意味でも、
大入り袋をと、劇場関係者も我々も、
待ち望んでおりましたが、
規定の観客数に及ばず、
涙を呑んでの、見送りとなりました。

昼の部は、
連日補助席も出る、盛況。
しかし、平日の夜の部に、
東京公演には珍しく、
空席が目立ちます。
本来なら、このブログで、
応援をお願いする所です、が…

今月、芝居がはねての帰り道、
いつもなら、一日の勤めを終えて、
ほっと一息、ほろ酔い機嫌、
顔を桜色に染めたサラリーマンで、
溢れかえるホームが、
どこか、閑散と。
立ちっぱなしの電車も、
余裕で座れます。
確実に、夜の街から、
人波が途絶えているのを、
実感しました。

文楽でも、
たくさんのお客様が、
「ちょっと夜は出にくくて」
と申し訳なさそうに、仰るのを、
無理からぬ事と、お聞きしました。

芝居見物に、劇場に来て、
もしあの時の揺れに、
再び見舞われたら。

あの日の様に、何時間も掛けて、
街灯の無い、真っ暗な道を、
歩いて帰る事になったら。
家に残した家族達と、
再び会えなくなったら。

文楽を見に行かない、
のでは無く、
行きたいけれど、行けない、
という、お客様方の思いは、
大阪にいて、激しい揺れを、
経験しなかった私にも、
身に沁みて、感じられました。
そこで、夜の部にもどうぞ、
という呼び掛け、
今回ばかりは、
控えさせて戴きました。

その思いを、強くさせて戴いたのは、
今月も、引き続いてお願いした、
震災への義捐金。

大阪より、ずっと短い公演期間、
しかも方々に、募金箱の設けられた東京で、
450万を越える、義捐金が集まりました。
楽日の計算で、
469万2944円と、聞いております。
皆様方の、被災地に寄せる、
温かなお志。

今月は、国立劇場を運営する、
日本芸術振興会と、共催と言う事で、
劇場関係者が取りまとめ、
四月と同じく、日本赤十字社に、
責任を持って、お届け致します。

皆様の御協力に、
心から、御礼申し上げます。
有難うございました。

九月には、更に街も落ち着いて、
心静かに舞台を、御覧戴けたら、
と願っています。

が、しかし、皆様どうぞ焦らずに。
文楽は永久に不滅です。
12月も、2月も、大阪も、巡業も、
公演は続いて参ります。
皆様が文楽の舞台を、
豊かな気持ちで、心行くまで、
お楽しみ戴ける日を、
私共も息長く、じっくりと、
お待ち申し上げております。

皆様ご安心下さい。
文楽は、皆様と共に。
けっして、逃げませんから。

豊松清十郎

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[2011/05/28 08:20] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
NHKプレミアム「新日本風土記」放送時間が変更になりました。
先日5月10日、当ブログでお知らせ致しました、
BSプレミアム「新日本風土記」の放送時間が、
変更となりましたので、お知らせします。

本放送: 6月24日(金) 20:00-20:57
再放送: 6月26日(日) 10:00-10:57
再々放送:6月28日(火) 8:30-9:27

以上の様に、全て一週間繰り下がります。

番組の方は、ようやく全ての収録が完了、
いよいよ、編集作業が始まった所。
文楽人形の動きを、どう画面の中に生かし、
どう切り取って、面白く御覧戴こうかと、
毎日、頭を捻っている最中です、
と、ディレクターの小山さんから、
連絡が来ました。

BSプレミアム
「新日本風土記」
6月24日放送です。
どうぞご期待下さい!
(また宣伝してしまいました)

豊松清十郎

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[2011/05/24 07:36] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
忠兵衛頬被りの巻・その3「ホーラの段」
ではここで、皆様にも出来る、
簡単な頬被りの結び方を。
本日お手伝いいただくのは、
皆様すっかりお馴染み、
吉田玉彦さんです。

吉田玉彦さんです

まず、約75センチ(かしらによって、変わります〉程の、
白木綿の布を、
ご用意いただきます。

二つに折ります

これを二つに折りますが、
この時、左に来る方を、
少し長めに取って下さい。

左に来る方を 少し長めに

これをかしらに被せたら、
折目の山を残して、まず一つ、
襞を取って戴きます。

まず一つ 襞を取ります

そこを、
ずらさない様にして、
更にもう一つ、襞を取ります。

ずらさない様にして

もう一つ襞を取ります

最後にもう一つずつ。
左右から、
慎重に。

最後にもう一つずつ

左右から慎重に

顔の右から来る方を、
アゴにかけて、
左の方と、交差させたら、

右から来る方をアゴにかけます

左の方と交差させます

左の方の手拭いを、
ねじります、
中尾彬の様に、

左の方をねじります

その捩った部分を、交差した所に、
挟み込み、
ギュッと絞ると、

ギュッと絞ります

ホーラ、出来上がり。

出来上がりです

うーん、
まだまだ、理想には、
程遠いですが(トホホ)。

まだまだ理想には

皆様も、是非お試しくださいませ。

是非お試しください

豊松清十郎

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[2011/05/21 20:35] | なまけず一所懸命 | トラックバック(0) | page top
忠兵衛頬被りの巻・その2「しみじみの段」
そんな苦い思い出ばかりの、
頬被りでしたが、
今回頭を切り替えて、
まっさらな気持ちで、
一から取り組んでみました。

この襞は、何の為に取っているのか。
ここはどんな風に、力が働いているのか。
出来上がった形より先に、
その辺りを、考えながら進めて行くと、
分かって来たのです。
襞の取り方、あごへの掛け具合、
捩って、挟んでどう締めるか。
師匠方が、見るに見かねて、
教えて下さった、頬被りの勘所、
猫に小判だったその教えを、
ようやく少し、活かせるようになりました。

勿論、まだまだ水準にも、
程遠い出来映えですが、
ずっと逃げていた事に、
真正面から取り組めて、
進むべき道筋が、
彼方に見えたこの嬉しさ。
力が湧いてきます。

それにしても、入社(?)四十年。
世間では、そろそろ定年か、という年で、
こんな、イロハのイの字の様な事を、
まだやっていても、許して戴ける。
文楽を選んで、本当に良かった、
としみじみ感じる、
今日この頃でございます。

豊松清十郎

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[2011/05/21 18:20] | なまけず一所懸命 | トラックバック(0) | page top
忠兵衛頬被りの巻・その1「つんつるてんの段」
今回遣っております忠兵衛、
“人目を忍ぶ頬かむり”と、
浄瑠璃の文句にもある通り、
白手拭いに顔を包んで、
大阪から、
生まれ故郷の新口村へ、
梅川と二人、落ちて参ります。

二枚目に頬被り、
風情があって、
まことに結構な物ですが、
これが、なかなか難しい。
いや、“私には”難しい。

忠兵衛以外にも、明烏の時次郎、
夏祭の清七こと磯之丞など、
舞台の上で、頬被りをする役も、
幾つか、遣わせて戴きましたが、
頬被りの出来映えには、
自分自身が、ほっかむり、
目をつぶって、やって参りました。

稽古前に小道具さんから、
白手拭いをいただく時は、
張り切っているのです。

今度こそ、粋にすっきり、
男の色気も滲ませて、
玉男師匠の治兵衛、
簑助師匠の忠兵衛、
あんな形で、こんな姿でと、
意気込んで、人形に向かうと…
これがいけない。

師匠方、兄さんたちは勿論の事、
若い人でも、上手い人なら、
あっという間に、拵え上げるのに、
こちらは、いくら捻くり回しても、
一向に出来ません。

襞が取れない、
折山がずれる、
顎に掛からず、すっぽり抜ける。
あっという間に、10分が20分。
時間のある限り、悪戦苦闘しても、
良くなる所か、事態は益々、
悪化の一途。

皺だらけの手拭いに、
何度も何度も、
アイロン掛けては、やり直し。
いつしか白木綿も、手垢に塗れて、
薄鼠。

ピンと立つ筈の、手拭いの端も、
情けなく、うな垂れています。
それならと、のりを吹きかけ、
アイロンで固めて、再挑戦。
あまり固くしない方が、
良く締まって形も良い、
という事を知らず、また何回も。
やがて薄鼠が、黄ばんできて、
なんとも奇妙な色合いに。

もうこれで良し!
と切りを付けた筈が、
ふと見ると、右が長い。
ちょっと切って、結び直すと、
今度は左が。

終いに手拭いは、つんつるてん。
恥を忍んで、もう一枚、
小道具さんに戴くと、
振り出しに戻って、
また一から、やり直し。

時間も迫って、舞台に出る頃には、
疲労困憊、戦意喪失。
手拭いも、こちらの首もうなだれて、
すっきり、きりりと二枚目の雰囲気など、
出せよう筈も、ありません。

豊松清十郎

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[2011/05/21 10:18] | なまけず一所懸命 | トラックバック(0) | page top
梅川忠兵衛、衣裳新調の巻・2
文楽人形には、骨も肉もありません。
手足は、胴と呼ばれる土台から、
紐一本で、ぶら下がっているだけ。
骨も肉も、人形遣いの遣い一つで、
作り上げて行くのです。
そこで大切なのが、衣裳に入った薄綿と、
生地そのものの、腰。

これだけです!
これだけ、これだけです!(まったくの裸です)

新品は、綿も生地も固い、固いのです。
人形の手に添わないと、
思った体の線が、出てくれません。
人間でしたら、たとえば織物の様に、
固い生地でも、
中にある体の動きは、伝わりますが、
人形は、そうは行きません。

どこから見てもこれだけ
どこから見てもこれだけです

特に困るのが、女形。
女性らしく、肘を殺して、
しなやかな線を出したいのに、
あそこが突っ張る、
ここが飛び出る。

アップで見てもいっしょ
アップで見てもいっしょです

袖付けの、肩山の所は、
生地が重なり、折目もあって、
特に言う事を、聞いてくれません。


梅川の後姿です
梅川の後姿です

勿論、仕立てる衣裳部でも、
使う生地の素材から、
綿の入れ加減まで、
様々に、細かく気を配って、
何とか新調でも、遣い易い様にと、
工夫を凝らしてはいるのですが、
それにも限界が。


袖付け部分です
袖付け部分です。(わかりますか? ここが盛り上がるのですが)

梅川を遣われる、
紋壽兄さんも、
お稽古の時、
「ひゃー、こりゃあかんわ」
と仰って、それからは毎日、
楽屋に戻ると、衣裳を揉んだり、
叩いたり。

公演も半ばを過ぎて、ようやくこの頃、
少し思う様に、なって来た御様子。
この先、数多い舞台で使われて、
ようやく具合が、良くなってきた頃には、
生地が弱り、染めも色褪せて、
また新調の時期に。


梅川忠兵衛の紋です
梅川忠兵衛の紋です。(実はこの紋も、今回新しくなりました)

見栄えと使い勝手が、上手く重なる時は、
ほんの僅か。
花の命は短くて、という所でしょうか。

それにしても、誂えたばかりの、
衣裳を目の前にして、
「ああ、またサラか。
かなわんなぁ」
と溜息をついているのは、
芸界広し、と言えども、
文楽くらいの物でしょうね。

豊松清十郎

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[2011/05/18 20:10] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
梅川忠兵衛、衣裳新調の巻・1
東京公演は、中日を過ぎ、
後半戦に突入致しました。
大阪に引き続いての、義捐金活動は、
今月も、連日多くの皆様に、
御協力戴き、関係者一同、
大変喜んでおります。
厚く御礼申し上げます。

今回の公演、東京には珍しく、
平日の夜の部に、
空席が目立ちます。
しかし、何と言っても、
あの震災の後。
暗くなって、家を空けるのはどうも、
という、お客様のお気持ち、
痛いほど、伝わって参ります。
今暫くは、
我々もその痛みに、
耐えて行かねば、と思っております。

先日、女性のお客様から、
「梅川、忠兵衛の着物、
変わってません?」
と尋ねられました。
それも、何人も。
さすが女性は、お着物に敏感。
正解です。

新しい梅忠です
新しい梅忠です

今回梅川、忠兵衛の衣裳、
久し振りに、新調いたしました。
落人という、二人の境遇を踏まえて、
裾模様の柄は、以前の物より、
ぐっと派手さを、抑えた物に。
それについては、皆様其々に、
御意見がおありでしょうが、
これから、お話ししたいのは、
仕立て下ろしの、衣裳について。

梅川の裾模様です
梅川の裾模様です

忠兵衛の裾模様です
忠兵衛の裾模様です

どの世界でも、新調の衣裳は、
喜ばれる物です。
大歌舞伎では、役者のお好みに合わせ、
毎回衣裳を、誂える様ですし、
洋の東西を問わず、まだ誰も袖を通さぬ、
新品の衣裳に、文句を言う人は、
一人もいない筈。
ところがところが、文楽では、
それがそうでは、無いのです。

梅川の裾模様のアップ
梅川の裾模様のアップです(ちょっと、地味ですかね)

忠兵衛の裾模様のアップ
忠兵衛の裾模様のアップです(どうも舞台映えは、しないようです)

豊松清十郎


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[2011/05/18 10:39] | おしらせ | トラックバック(0) | page top
床山の高橋さんに、いろいろ聞きました。「立兵庫編」(シリーズ・いろいろ聞きました)
今回は、初の試み。
インタビュー形式で、お送りします。
ゲストは床山の、
高橋晃子さんです。
4月大阪公演で勤めた、
傾城宮城野の髪型、立兵庫(たてひょうご)に関して、
お聞きしました。



えー、まず立兵庫というアタマ(鬘の事)ですけれども、
これは文楽では、傾城がしらにしか使わないんでしょうか?

「そうですね、傾城がしらにしか使いません」

4月公演「宮城野」の立兵庫
4月公演「宮城野」の立兵庫

他に、遊女に使う髪型というと、どんな物が?

「つぶし島田ですね。おかるの様な」

それが、一般的ですか

「はい」

歌舞伎の方では、どうなんですか?
立兵庫に結った鬘というのは。

「これを結っていらっしゃる役は、
色々あります」

あ、やっぱりあるんですか。
文楽では、このかしらでしか見ない物で。

「このかしらだけです。阿古屋とか梅が枝とか、
最上級、松の位の太夫さんですね」

では歌舞伎の方では、もっと位の低い遊女でも、
立兵庫に結う役が、あるという事ですか?

「はい」

この大きく割れた、後ろの部分、
これは何と呼ぶんですか?

立兵庫の後ろ
立兵庫の後ろ

「髷です。兵庫髷と言います」

あ、それで立兵庫と言うんですか

立兵庫の上から
立兵庫の上から

立兵庫の右側面
立兵庫の右側面

「はい。これもね、
立兵庫と言ったり、
伊達兵庫と言ったり、
横兵庫だったり、
呼び方は様々なんです」

はあぁ

「歌舞伎では、伊達だったり、立だったり、
京都の、舞妓さん達を結われる床山さんは、
横兵庫と呼んだり。
でも文楽では、名越師匠から立兵庫、
とお聞きしてますので、そういう風に申し上げてます」

実際に今回、傾城がしらを持たせて戴くと、
例えば、重い事に加えて、
この兵庫髷が、後ろ襟に擦れたりして、
大変なんですよ。
だから、普通の遊女には使えませんね。
傾城がしらの様な、ゆったり動く役でないと。


高橋晃子さん
高橋晃子さん

「それでね、軽くしているんですよ。
ここ(前の所)、櫛二枚ですよね。
三枚なんですよ、本当は」

櫛は二枚です
櫛は二枚です

あ、三枚が決まりなんですか。

「決まりなんです、大盛装は。
で、ここは三本だから良いんですけど、
この簪(かんざし)、省いて一本になってます。
本来はもう一本ずつ、入んなきゃいけないんですね」

へーえ、それが定法というわけですか。

「そうですね。遣いにくいし、重たくなるでしょう、
と言う事で、簡略化しています」

歌舞伎との違いは、軽くする以外、
他にもありますか?

「飾り物が、江戸前になって来ると、違うんですよね。
この布の所、助六の揚巻だと、
金の巻き上げだろうと思うんです。
それに、これも違います」

ほーお。因みにこれは、何というんですか?

「襟擦りと言います。襟に擦れますでしょう」

襟擦です
この長い飾りが襟擦です

襟擦を近距離で
襟擦を近距離で

じゃあ、吉原の太夫さんは、少し髪型が。

「さっぱりしていて、ちょっと粋な感じです。」

それが江戸前、と言う訳ですね。

「はい。それから、ここも違うんです。
この蝶々、付いてないんです」
蝶々です
蝶々です

へぇ、僕らは見慣れて、これが無いと、
立兵庫の感じがしませんけど。

「文楽は京の島原、大阪の新町、
夕霧太夫の様な、派手な形で」

こちらは、上方風に。

「だから、あのぉ、今回は浅草の吉原が舞台なので、
ちょっとまあ、どうかなって思われないかと」

でも、文楽の舞台に、急に江戸前が出てきてもねぇ。
登場人物、みんな上方なまりですし。
お客様も、戸惑うんじゃないかな。
全て分かった上で、やっている訳ですから、
文楽は、これで良いんじゃないでしょうか。

「私も、これで良いと思っています」

もう一度
もう一度見てみましょう

こういう所、すごく興味深いですね。
で、この鬘で苦労される所と言うと、
どういう所ですか?

「そうですね、このかしらはずいぶん重い物ですから・・・」

すると、
「ちょっと計ってみましょうか」
と、人形細工人の村尾君登場。

「えーと、車曳の松王丸が750グラム。
宮城野は・・・900グラム近くありますね」

やっぱり、文楽一ヘビーな様です。

「ですから、まず軽くする事。
それと、バランスが、重要かと思うんですよ。
この根取りの所・・・」

根取りと言うのは?

「髷を結う時に、髪を集める所です。
この根取りの位置で、髷が前に行ったり、
後ろに行ったりで、多分、遣われる方の、
重さの感じも、変わって来ると思うんですよ」

見た目の美しさ、形もだけれども、
人形遣いに負担にならない様に。

「はい」

遣いやすく、と言う事を、まず第一に考えている、と。

「はい。この襟擦りも、引っ掛かるんですよね」

そうですね、(先代の)清十郎師匠が、阿古屋をやられた時なんか、
毎日の様に、プツプツ切れてました。

「あのこれね、(飾り板をつなぐ)環を変えたんです」

えっ、そうでしたか。

「曲げた輪っかの、この隙間から取れてしまうので、
隙間が開かない様に、職人さんにお願いして」

ああ、それで今回、ほとんど切れないんですね。

「あとまぁ、歌舞伎との違いと言うと、
立兵庫に限りませんが、
うちは油を、一切使えませんので」

あのぉ、私も解説などでお客様に、
文楽の床山は、水だけで結うので大変だ、
と言う様な話を、するんですが、
鬢付け油が無いと、結いにくい物ですか?

「そうですね。鬘を作る時にも、
毛の長さを揃えておかないと、
結う時に髪が、パラパラと落ちてしまうので」

油があれば、くっついてくれるんですね。

「ある程度、くっついてくれます。
それと清十郎さん、
うちは水も付けないんですよ」

ええっ?

「サラッサラでいっといて、後からヘアスプレーだけ。
結っている間は、何も付けないんです」


下ぶくれですね
下ぶくれですね

いやぁ、適当な事を言っているもんで。
ずっと嘘をついていました。

「ちょっとこれは、訂正をお願いします(笑)」

すみません(汗)。

床山さんのお部屋です
床山さんのお部屋です



何よりも、人形遣いのやりやすい様に、と心を砕き、
様々に、工夫を続けて下さっている、高橋さん。
公演中の忙しい最中、お時間を割いて戴き、

有難うございました。

この後、師匠の名越昭司さんについて、
また、後継者を育てるという立場から、今思う事など、
更にまだまだ、お聞きしています。
日を改めて、
またお伝えしたいと思います。

勿論、他の技術部、スタッフの方々にも、
インタビューを敢行し、
皆様に貴重なお話をお届けすべく、
虎視眈眈、機会を狙っています。
どうぞお楽しみに。

豊松清十郎

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[2011/05/16 16:02] | あきらめず文楽一途 | トラックバック(0) | page top
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